ゆる公認心理師ブログ

心理や教育分野についての記事を書いています

場面緘黙児の支援方法【話せる場面を増やそう!刺激フェイディング法について】

f:id:kojimaru14:20220219220826p:plain

こんにちは、公認心理師の津田です。
「場面緘黙児の具体的な支援方法がわからない・・・」と悩んでいませんか?

そんな方に向けて、場面緘黙児の具体的な支援方法についての記事を書きました。

  • 場面緘黙児の具体的な支援方法について知りたい!
  • 刺激フェイディング法って何?
  • 学校でできる支援について知りたい?


本記事では、「場面緘黙児に関わっている人向け」に、刺激フェイディング法を用いた支援について説明をします。


当記事を読めば、場面緘黙児に対する具体的な支援方法について少しわかると思いますので、是非ご覧ください!

目次

1.場面緘黙の具体的な支援方法

場面緘黙の支援については、色々な人が色々な方法で取り組んでいます。これが絶対に有効であるという方法はなく、子どもの実態に合わせて支援方法を検討していくのが現状です。

例えば、行動療法や、遊戯療法、箱庭療法など、いろいろな方法を用いた研究や実践が報告されています。

今回は、行動療法の一つである、刺激フェイディング法を用いた支援について紹介します。

2.刺激 フェイディング法の紹介

場面緘黙児に対する支援方法として、有効性が高いと感じているのが刺激フェイディング法です。
場面緘黙児であれば、少しずつ刺激を入れたり(fade-in)刺激を取り除いたり(fade-out)しながら、話せる場面を増やしていくという方法です。実行条件が揃えば、この方法は非常に有効であると考えられます。

例えば、学校の中で、お母さんと2人きりなら話せるお子さんがいたとします。そこへ、学校の先生が扉の向こうにいる状況でも話せるようにしていきます。次第に、扉を開けた状況や、先生がそばにいても話せるようになるように支援をしていきます。

実際には、話せる状況や緊張の少ない場面から支援をしていくことが重要です。

2.子どもの安心できる場面から始める

場面緘黙児は、特に学校で話すことに対して、困難さを抱えていることが多いです。そのため、学校の日常生活場面で話せるようになることを目標とすることが多くなります。刺激フェイディング法では、まず、子どもの安心できる場面で話せるようになることから始めます。

学校であれば、子どもから安心できる場所(例えば、放課後の教室や、誰もいない空き教室)を聞き、そこで安心できる相手(例えば、とても仲の良い友だち、保護者や先生)と話せるようにします。話せるようになってきたら、次第に場所を変えたり相手を増やしたりして、最終的に教室での指導をします。

とてもざっくりですが、徐々に刺激を増やしていくことがポイントです。

3.般化の困難性

この方法は、有効な手立てに見えますが、一方で般化の困難性を抱えています。般化とは、あるところでできたことが、他のところでもできるようになることです。

例えば、刺激フェイディング法で考えると、放課後の教室で話せるようになったけれど、教室で話せるようになるという保証はないのです。放課後の教室で話せるようになったとすれば、それは刺激フェイディング法の有効性を示していますが、最終的な目標にはたどり着けていません。また、学校外で指導を始めた場合(例えば、通級指導、大学等の指導室)、さらに般化しにくいのではないかと考えられます。

とはいえ、この方法は非常に有効であり、時間はかかるものの、成果を出している実践研究も多々あります。

もちろん、普段の学校生活場面で話せるようになることがベストですが、そこにたどり着けなかったとしても、刺激フェイディング法で話せる場面を広げていくことは、場面緘黙児にとっては意味のあることだと思います。

まとめ

最後に、今回の内容についておさらいしてきましょう。

  • 場面緘黙児の支援方法は、いろいろあります(行動療法・遊戯療法・箱庭療法など)。
  • 刺激フェイディング法とは、刺激を入れたり取り除いたりして、話せる場面を増やしていくことです。
  • 話せる場面が増えていっても、最終目標にたどり着けないこともあります。

以下に、参考となる論文や本を紹介します。

刺激フェイディング法を用いた論文
加藤哲文・小林重雄・財部盛久(1981)中度精神遅滞児の選択性緘黙反応に対する行動療法的アプローチ.行動療法研究, 7 (1), 2-8.
園山繁樹(1992)行動療法におけるInterbehavioral Psychology パラダイムの有用性-刺激フェイディング法を用いた選択性緘黙の克服事例を通して-.行動療法研究,18,1,61-70.
松村茂治. (1992). 場面緘黙児の発話行動の般化を促進するための学校場面におけるフェーディング法の適用 (資料). 行動療法研究, 18(1), 47-60.
松村茂治. (1998). クラスのなかの場面緘黙: 緘黙児とクラスの子どもたちとのふれあい. 東京学芸大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要, 22, 75-91.
趙成河・河内山冴・園山繫樹(2019)場面緘黙を示す幼児に対するクリニック型行動的介入の初期段階における刺激フェイディング法及び随伴性マネジメントの適用.障害科学研究,43,183-192

刺激フェイディング法について書かれている書籍
松村茂治(1994)教室でいかす学級臨床心理学.福村出版.
刺激フェイディング法の理論や、場面緘黙児の指導実践について書いてあります。

以上、最後までお読みいただきありがとうございました!